血液・腫瘍疾患Q&A
Q : 生存曲線の見方がわかりません
A :
治療がうまくいくかどうか(助かるかどうか)を表すのに生存曲線というものがあります。たとえば、100人治療して80人再発しなければ、うまくいく確率は80%と単純に表すことができるのですが、問題なのは100人みんなが同じ時に治療に入っていないことなのです。ある人は5年前、ある人は10日前といったようにばらばらですから、これをうまく表現するために生存曲線があります。よく使われるのはカプランマイヤー法と呼ばれるものです。
ちなみに生存率は生きてるか、死んでるかを表します。
無病生存率や無イベント生存率は、若干違いますがほとんど同義でイベントがあるかないかを示します。イベントとはその解析の際に示されますが、おおくは死亡・再発などです。だから主に再発していなくて生きている割合を示すときに使います(いわゆる質のいい生存)。
Kobayashi R, Yabe H, Hara J, Morimoto A, Tsuchida M, Mugishima H, Ohara A, Tsukimoto I, Kato K, Kigasawa H, Tabuchi K, Nakahata T, Ohga S, Kojima S. Preceding immunosuppressive therapy with antithymocyte globulin and cyclosporine increases the incidence of graft rejection in children with aplastic anemia who underwent allogeneic bone marrow transplantation from HLA-identical siblings. Br J Hematol 135: 693-696, 2006より
これは一般的なものですが、このように階段状の線に一部短い棒(ひげとよんだりします)が縦についています。このひげは生存率を示している場合には生存している人、無病生存率の場合は再発していなくて生きている人を指します。1本がひとりです。逆に死んでいる人、再発している人がいるとその時点で階段が一段下がるわけです。時間がたっていないと一人落ちでも落差は少ないですが、時間がたっていると落差が大きくなるわけです。上記のグラフの場合、20ヶ月の時点ではno ATG+CsAが90%くらい、ATG+CsAが70%くらいとなります。さらに、80ヶ月ではno ATG+CsAは86%くらい。ATG+CsAは70%くらいとなります。
Q : 副作用が出ない人は薬が効いていないのでしょうか?
A :
よく化学療法をすると髪が抜けます。このことをあらかじめお話ししておくのですが、ときにはあまり抜けない子もいます。これは好ましいことですが、よく"髪が抜けないから薬が効いていないのではないですか?"という質問を受けます。基本的に効果と副作用は別ですので、髪が抜けないから薬が効かないということはありません。もっとも好ましいのは効果があって副作用がないことです。もっとも好ましくないのは効果がなくて副作用があることですね。効果があって副作用がある(多くの薬がこれに該当します)、あるいは効果がなくて副作用もない(これは何の意味もない)、というのもありですが。
将来的には、効果があって副作用のない薬というものばかりになるといいのですが、現在の医学ではまだまだ難しいようです。
Q : 何年間寛解状態だったら治ったといえますか?
A :
最近は治る小児がんも多くなってきました。順調に治療が終わり、何事もない日々が続くと、よく外来で"いつになったら治ったと言えますか?"とか"いつまで通わなくてはならないですか?"といった質問を受けます。一般的には癌の生存率をみるのは5年が多いのですが、実際には7年で再発したり、といった方もいらっしゃいます。もちろん、期間がたつと再発する可能性は減っていきます。でも"いついつならば大丈夫"と言える医師はあまりいないのではないでしょうか。さらに、長期生存者が出ることで、今までにわからなかった2次がん(違うがんになること)や晩期障害(身長や生殖機能など)の問題がクローズアップされてきています。いつまで通わなくてはならないか、というと、たぶん多くの小児科医は"ずっと"と答えるのではないでしょうか。
ただ、生命保険に入るなどの問題で治癒したという証明が必要という場合もあるようです。あるいは、過去に病気をしているので生命保険には入れない、といった相談もあります。ハートリンク(http://hartlink.net/)というところでは白血病や小児がんを克服した方でも入れるようです。